ダイヤモンド社から出版されている、コンサルティング会社CEOのビル・パーキンス氏の書いた
「DIE WITH ZERO」のレビューです。
コンサルティング会社CEOのビル・パーキンス氏の著書。ウォールストリートやトレーダーとして働いた経験を持ち、現在は1億ドル超の資産を運用するヘッジファンドのマネージャーでもある。経済的に豊かになるだけでなく、人生を豊かにするための方法を考え続けてきた著者が、本書を通じて私たちに「人生が豊かになりすぎる9つのルール」を教えてくれます。
こんな人におすすめ
- 日々やりたいことを我慢して節約に励んでいる方
- NISA、iDecoの出口戦略を立てていない方
- 子どもへの遺産相続を具体的に考えていない方(まだ早いと考えている方)
働きアリはいつ遊ぶことができるのだろうか?
まず目に入ったのが、明るい青に蛍光色の黄色を掛け合わせたビビットな表紙でした。しかもタイトルが「DIE WITH ZERO(ゼロで死ぬ)」!どんな本かとまえがきを読んでみると、1ページ目からアリとキリギリスのイソップ寓話が紹介され、「人生には、働くべきときと遊ぶべきときがある、という教訓だ。だが、ここで疑問は生じないだろうか?アリはいつ遊ぶことができるのだろう?それが、この本のテーマだ。」という導入に興味を持ち、購入しました。
以前、オーストラリアに4泊5日旅行したときに、現地のレンタカー会社で車を4日間借りました。その際に車内に前の使用者のレシートが残ってました。見てみると、レンタル期間が28日間!私もロングバケーションしたい!って思いましたね。 日ごろから「なぜ日本は長期休暇が一週間しかないんだろう。ヨーロッパのように1か月以上あれば良いのに。日本は働きすぎだよ・・・」と思っているので、「アリはいつ遊ぶことができるのだろう?」という言葉がまるで自分に向けられているようでした。
多くのYoutubeのDIE WITH ZEROの要約動画では省かれてしまっている、子への相続に関しても金言があったので紹介しますね。
冒頭の「アリはいつ遊ぶことができるのだろう?」という問いに対する、私なりの回答を最後に紹介します。
DIE WITH ZEROのポイント
特に印象に残っているポイントを順に紹介します。
豊かになっているはずの将来の自分のために、若く貧乏な今の自分から金をむしり取っている
私たちは喜びを先送りしすぎている。人生が無限に続くかのような気持ちで、手遅れになるまでやりたいことを我慢し、ただただ金を節約する。節約ばかりしていると、そのときにしかできない経験をするチャンスを失う。
DIE WITH ZERO より引用
将来への投資と現在の生活のバランスについて考えさせられるものですね。著者は、将来に備えてお金を節約することが重要である一方で、その過程で現在の喜びや経験を先送りしていると指摘しています。また、人生は経験の合計であり、その経験が人を豊かにするという視点も興味深いです。将来の安定を重視する一方で、生活を豊かにするためにも現在を大切にし、経験を大切にするバランスの重要性を考えさせられるものと言えます。
一度きりの人生で、何を経験し、どれだけの思い出を作りたいのか、しっかりと考えていきたいです。
生きているうちに金を使い切ること、つまり「ゼロで死ぬ」を目指してほしい
どれだけ働いて金を稼いでも、まだ稼ぎ足りないと感じる人は多い。資産が増えるにつれてゴールポストも動き続ける。
DIE WITH ZERO より引用
資産を増やし続けることに対する疑問と、人生を豊かに生きるために資産を積極的に使うべきではないかという考えを提案しています。著者は、働いて得たお金をすべて使い切ることを提案しており、「ゼロで死ぬ」ことを目指すことで、人生の時間をより豊かに使えるのではないかと述べています。また、将来のためにお金を貯め続けることが果たして意味があるのか、老後まで生きることが保障されているわけではないと指摘しています。お金や資産に対する一般的な価値観に疑問を投げかけ、人生をより意味深く生きるための新しい視点を提示しているように感じられます。
本書の中で紹介がありましたが、FRB(連邦準備制度理事会)の調査によると、年齢が上がるにつれて純資産は増える傾向にあり、なんと70代になっても人々はまだ未来のために金を貯めようとしているらしいですよ!
これは気を付けないといけないなと思いました。必要以上にお金を稼げるのであればそれはそれで良いことですが、少なくとも70代になっても未来のためにお金を貯めようとするのはナンセンスですよね。
やりたいことの「賞味期限」を意識する
いつまでも子どもと子ども用プールでは遊べない、ということです。著者は、「子どもが成長して次の段階に移るまでに一緒に何をしたいかを考えてみよう」とおっしゃっています。期間を区切った「死ぬまでにやりたいことリスト」(タイムバケット)と呼ばれるツールが紹介されているので、ぜひ試してみたいと思いました。タイムバケットの具体的なやり方はGoogleで調べれば解説サイトがいくつか出てくるので参考にしてください。
また、長年、緩和ケアの介護者として数多くの患者を看取ってきたブロニー・ウェア氏がまとめた、「死ぬ前に後悔することトップ2」についても紹介されていました。
1位:勇気を出して、もっと自分に忠実に生きればよかった
2位:働きすぎなかったらよかった
私は1位の「自分に忠実に生きればよかった」については、まあまあ実践できているかなと思っています。ただ、2位の「働きすぎなけかったらよかった」については、正直20代~30代で働きすぎてしまったな・・・と後悔しています。特に20代はほぼ毎日朝8時30分から23時くらいまで働いて、お金のために人生の時間を犠牲にしてしまったと思っています。その後20代後半で転職して残業時間が減り、さらに今は40代で職場が変わったことによって残業は以前よりさらに減りましたが、それでも働きすぎてないか定期的に振り返ってみるのは大事だと思います。
子供たちには、あなたが死ぬ「前」に財産を与えるべきだ
著者は、自分が死んでから財産を分け与えるのでは遅い。大切な子どもたちが、受け取った財産を最大限に活用できるタイミングを考えてあげるべきだと言っている。死ぬまで子どもに財産を分け与えないことは、偶然に身を任せるということで、どれくらいの「額」を、「誰」に、「いつ」相続するか、ランダムに決まることになる。ほとんどの人は、「子どもたちのために」という善意を持っている。だが、その意図に反してその善意を行動で示せていない。
著者によると、金の価値を最大化できる年齢は26~35歳、とのこと。つまり、子どもが26~35歳の時に自分の財産を分け与えれば、家族単位で見ても金の価値を最大化していると言える。具体的な財産を分け与えるタイミングを私なりに考えてみました。
- 結婚するとき
- 子どもが生まれたとき
- 家を購入するとき
私自身も家を購入するときに親から援助を受けましたが、頭金の一部を出してもらえたことでとても助かりました。(親からの援助金を頭金に充てずに低金利な住宅ローンは頭金なしで借り、代わりに資産運用に入れる、というのが経済的合理性の高い行動のようですが、私が家を購入した当時はまだその考えは一般的ではありませんでした。)
まとめ:年齢にあわせて「金、健康、時間」を最適化しよう
著者の推奨する資産の取り崩し開始タイミングは45~60歳と、想定より早いと感じました。 私は今40代ですが、まだまだ金額的に資産形成は道半ばです。ただ、漫然と「定年(60歳)になったら雇用延長せずにリタイヤ生活を満喫したい」と考えていましたが、このまま健康に定年を迎えたとして、惰性で雇用延長して働き、貯金を続けそうなので気を付けないと。iDecoやNISAの出口戦略について改めて考えないとな、と思いました。
また、導入の「アリはいつ遊ぶことができるだろうか?」に対する答えを自分なりに考えてみました。それは、結局「常に今」なのかなと思いました。例えば20代であれば、お金を使って得られた経験や思い出の複利効果を最大化できるので、20代こそ遊べということになります。次に、30代であれば、もし子どもがいたとして、子どもが幼い時にしかできないことを一緒にやるべき。次に40代であれば、収入も上がりお金に余裕がありますし、まだまだ身体は動く。50代、60代はアクティブなことをする最後のチャンスかもしれない。70代になったらもう将来のために金を貯めるのはバカらしい。つまり、(資産運用や子どもへの財産分与はしっかり考えるとして、)使い切れないお金のために自分の人生を差し出すのは無駄であり、「今、遊ぶべき」なのだ、というのが私の考えです。
本書は、質素倹約を良しとし、日々つい働きすぎてしまう日本人にぜひ一読してほしい本なので、おすすめポイントがいつもより多めになってしまいました。私自身、この本は定期的に読み直したいと思っています。
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